2018.1.16 UP DATE

第7回:都響 広報・営業部 竹末健太郎さん(1)オーケストラと社会とをつなぐパイプ役でありたい

大ホールを華やかに、そして迫力満点に彩るオーケストラのコンサート。磨き上げられたプロの楽団が奏でるプログラムにはさまざまな工夫が凝らされ、初めてオーケストラのサウンドを耳にする人たちから、毎月訪れる定期会員まで、多くの来場者の心を満たしてくれます。指揮者や楽員たちの演奏はもちろんのこと、コンサートの企画や運営、そして周知を促す広報や集客など、さまざまな業務を行なう事務局の働きによって、1回1回のコンサートが充実したものとなっていきます。今回は、東京都交響楽団の広報・営業部の竹末健太郎さんのもとを訪れ、オーケストラ事務局での竹末さんのお仕事について教えてもらいました。

 

取材・文:飯田有抄/撮影:編集部

 

竹末健太郎さんプロフィール

 

 

 


 

■オーケストラと音楽の魅力を伝える「通訳」

 

――東京都交響楽団の演奏会を訪れますと、よく会場の出入り口付近で竹末さんのお姿を見かけます。にこやかに、かつキリッと、来場者をお迎えしたり、送り出されたりしていますね。

 

 

竹末 チケット引き換えの窓口対応や、終演後お帰りになるお客様をお見送りすることは多いですね。帰り際に「今日の演奏会良かったよ!」「感動しました」などというお声がけをいただくことがあると嬉しいです。

 

――普段は事務局の「広報・営業部」としてお仕事をなさっているとのことですね。

 

竹末 オーケストラの活動自体を広く知っていただくための広報や、演奏会チケットの販売促進の仕事をしています。

 

 広報というのは、オーケストラと社会とをつなぐパイプ役だと僕は思っています。オーケストラが発信したいことを、一般社会のお客様に広く知っていただきたい。そのためにはお客様の目線に立って、どんな情報だったら興味をもっていただけるかを常に考えています。

 

 

――その「情報」とは、具体的にはどんなところで目にできますか? どなたにもアクセスしやすいものはあるでしょうか。

 

竹末 たとえば都響のWebサイトでは、コアなクラシック・ファンのお客様だけではなく、これからオーケストラを聴いてみたい方にとっても読みやすい内容や、特定の作曲家や作品についての導入になるような特設ページも作っています。飯田さんのようなライターの方々にもご協力いただいて、「こういうポイントで、こういう内容の読み物をお願いします」と依頼し、ページを作成していきます。

 

――そうでした。以前、竹末さんからマーラーの「大地の歌」について文章をご依頼いただきましたが、その切り口がとても明確で、「ああ、こういう読み物をお作りになりたいのか」という方向性が、書く側にもよく伝わりました。

 

 

竹末 たとえば、マーラーの1番から9番までの交響曲はなんとなく知っているというお客様も、「大地の歌」のような作品となると、急にサーッと潮が引くように反応が薄くなってしまうときがあります。「大地の歌」にもこんな魅力や、こんな由来があるんですよ、というのをお伝えできれば、きっと関心をもっていただけるのではないかと、5つの視点にポイントを絞る形で執筆いただきました。

 

マーラー「大地の歌」&「葬礼」の都響の特設サイト

 

――解説よりも一歩手前の読み物、ですよね。そういった文章を書くのは個人的にも好きなので、ご依頼いただけて嬉しかったですし、ポイントを絞ることで私自身の理解も整理されました。

 

竹末 ストレートすぎる情報だと、かえって届きにくいこともあると思うのです。伝えたい情報を要約し、ある意味「通訳」をして情報を出さないと、演奏会や音楽そのものの魅力をお伝えできないこともあるかなと思います。20世紀や同時代の作曲家・作品紹介などについては、特にそう感じます。

 

 

――最近では、1月の定期公演で都響音楽監督の大野和士さんが指揮されるメシアンの「トゥーランガリラ交響曲」についてよくわかる特設ページもユニークな構成ですね。小田島久恵さんのコラム「クラシックとスピリチュアルな話」は、その切り口や星座占いも飛び出す内容が新鮮で、メシアンをより身近に感じさせてくれると思います。

 

メシアン「トゥーランガリラ交響曲」についての特設サイト

 

竹末 「トゥーランガリラ交響曲」の魅力をお客様にもっと知っていただくにはどんな方法があるか、いろいろと考えました。ひとつ思ったのは、作品の聴きどころなどを解説的にずらりと並べて紹介しても、未知の方々にはなかなか響かないのではないということ。作品名からしても「難しい」、メシアンという作曲家でさらに「とっつきにくい」という印象をもたれてしまう。そうした方々にも、少し身近なところの話題をうまく組み合わせて紹介できれば、「こういう捉え方もあるんだ」と知っていただけるのでは、と考えました。

 

 この作品には「愛」という概念が深く関係していますから、星座やドラマなどをキーワードとしてライトに書いていただこうと、小田島さんにご依頼させていただきました。

 

――このページでは大野さんの解説動画もあって充実していますが、私も原田節さんにオンドマルトノについて取材させていただいて、この楽器についてわかりやすくお伝えするお手伝いができて嬉しかったです。

 

同じく特設サイト内、オンドマルトノ奏者の原田節さんインタビュー

 

竹末 原田さんのお話はとても素晴らしかったですね。飯田さんには、以前ジョン・アダムズの作品「シェヘラザード.2」に関連して、生頼まゆみさんにツィンバロンの取材をしていただきましたが、珍しい楽器を前にしたときの飯田さんの子どものような目の輝きといったら……!(笑)

 

 

ジョン・アダムズの「シェヘラザード.2」に登場するツィンバロンの紹介ページ

 

――あまり知られていない楽器だけに、それはもう興奮しますよ(笑)。その仕組みなどをお伝えできることにも興奮でした。そうした珍しい楽器も含め、新しい作品について、都響が特設サイトで事前に情報を発信されていること自体も、広く知っていただきたいですね。

 

 

竹末 はい。たとえチケットの購入そのものには至らなかったとしても、特設ページなどをきっかけに都響のサイトを訪れていただいて、都響を知っていただくのも、広報としての大きな役割だと感じています。

 

 

■広報媒体のデザイン

 

――Webサイトだけではなく、広報のさまざまな媒体がありますね。

 

竹末 チラシやダイレクトメール、毎月発行している「月刊都響」(コンサート会場で配布)など、制作物はたくさんあります。「月刊都響」には、プログラムの楽曲解説のほか、オーケストラの活動紹介やインタビュー記事なども掲載しています。

 

色彩が特徴的な「月刊都響」

 

――内容の充実度はもちろんですが、デザインなどにもこだわっていらっしゃるのでしょうか。

 

竹末 そうですね。「月刊都響」については、年間を通じて指揮者の写真をベースとしながら、月ごとの代わり映えも出したいので色の指定にはこだわって、デザイナーさんと相談しながら制作しています。同じ黄色でも微妙に違う黄色だったり、蛍光色を使ったり……。私の担当ではありませんが、チラシやダイレクトメールなども、見やすさだけでなく印象に残るようなデザインに仕上げたいと思っています。

 

取材日に行なわれた都響の音楽監督、大野和士の指揮による「第九」のチラシ(左手前)と
マーラーの交響曲第3番のプログラムを取り上げたダイレクトメール(右)。

 

――クールでカッコいいイメージのものが多いですね。オーケストラの定期演奏会はどの楽団でも割とお客さんの年齢層が高いですが、若い人たちにも響きそうなデザインといったところも意識しているのでしょうか。

 

竹末 オーケストラの演奏会はご来場いただくと一目瞭然ですが、たしかに年齢層の高いお客様に支えられているのが現状です。しかし、昨今のシルバー層は情報に対して敏感ですし、シルバーだからといって若々しいデザインが響かないかというと、そうではありません。もちろん新しい若い顧客層も視野に入れながら、チラシを受け取る方々がどんな場所で手に取り、どの要素が際立っていたらしっかり見ていただけるか、お客様の目線、立場に立って考えます。そうしないと、本来のチラシとしての機能が成り立たなくなってしまいますね。

 

 

 


 

 プロフィール 

 

竹末 健太郎 たけすえ・けんたろう

 

武蔵野音楽大学卒業後、東京都が設立した
財団法人(現在:公益財団法人)東京都交響楽団に入団。
経営企画部にて、法人・個人のファンドレイジングを担当し、
寄付金獲得の企画立案と共に、100社以上の法人営業を経験。
2013年〜14年には、大手企業の広報・CSRにおける被災地支援を立案し、実行した。
広報・営業部では、Web特設ページや制作物の企画立案、メディア対応に従事。

 

 

 

 

 

 

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