2017.12.1 UP DATE

【NEWS】2017年度 第55回レコード・アカデミー賞決定!&総評

~クルレンツィス旋風吹き荒れる~

 

 2017年度 第55回のレコード・アカデミー賞(選定委員長:諸石幸生/全16部門)が10月22日と11月19日の2回にわたる選定委員会を経て、決定した。

 

 大賞にはテオドール・クルレンツィス指揮ムジカエテルナによる「チャイコフスキー:交響曲第6番《悲愴》」〔ソニー・ミュージックレーベルズ〕、大賞銀賞にも同じ演奏家たちによる「モーツァルト:歌劇《ドン・ジョヴァンニ》」〔ソニー・ミュージックレーベルズ〕、大賞銅賞には「現代曲」部門から初の3賞入賞となる、ルノー・カピュソン(ヴァイオリン)フィリップ・ジョルダン指揮ウィーン交響楽団、他による「21世紀のヴァイオリン協奏曲集」〔ワーナー・クラシックス〕がそれぞれ選ばれた。

 

 また、本年度から、「録音の新旧を問わず、歴史的に意義のある録音等を表彰する」新部門「特別部門 歴史的録音」が創設され、第1回の受賞ディスクとして、指揮者スタニスラフ・スクロヴァチェフスキを追悼するリリース3点、読売日本交響楽団による「シューマン/交響曲全集」、「ショスタコーヴィチ:交響曲第10番&同第11番《1905年》」、「ブルックナー:交響曲第5番」が選ばれている。

 

諸石幸生氏による総評

 

「レコード・アカデミー賞」の第1回は、1963年度に行なわれており、その年の「大賞」は、ブリテンの《戦争レクイエム》となった。以来、歴史は重ねられ、今年度は早くも第55回を数えるに至っている。

 

 しかも今回は、テオドール・クルレンツィス指揮による2つのディスクが、それぞれ「大賞」と「銀賞」に輝くという前代未聞の快挙を成し遂げている。確かにクルレンツィスは傑出した指揮者である。この「レコード・アカデミー賞」においても、彼の指揮による録音は、2010年度の「交響曲部門」を受賞しているし(曲目はショスタコーヴィチの交響曲第14番《死者の歌》)、昨年度は「協奏曲部門」でも受賞している(曲はチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲でソリストはパトリシア・コパチンスカヤ)。

 

 このように一人の演奏家に票が集まる現象は、近年顕著になってきた傾向のように思われる。昨年度のパーヴォ・ヤルヴィのなどもそうした現象の一つと言えるであろう。

 

 今回「大賞」に輝いたチャイコフスキーの交響曲第6番《悲愴》は、改めてこの作品が他人事ではない切迫感を持って再現されていたし、「銀賞」のモーツァルトの歌劇《ドン・ジョヴァンニ》も、これまで重視されてきた伝統や慣習といったものからは遠い、しかし大切なものは普遍であるという説得力を誇る演奏であった。しかもこの両作品共に、クルレンツィスが2004年に自ら創設したオーケストラ、ムジカエテルナが演奏しており、あたかもクルレンツィスの手となり足となったかのような演奏を繰り広げている点など、画期的である。

 

 さらに「銅賞」に輝いたのがフランスのヴァイオリン奏者、ルノー・カピュソンによる「21世紀のヴァイオリン協奏曲集」であることも注目されよう。これは「現代曲部門」からの大抜擢であり、カピュソンの演奏の斬新さと、各作品の焦点とがピタリと一致したことによるものと思われる。

 

 2017年度の「レコード・アカデミー賞」の「大賞三賞」はかように決定されたが、もちろん、これら以外の各部門賞に輝いたディスクたちも特筆されるものばかりである。というのも、どのディスクも、昨年一年間を通して各部門において最終的にベスト・ワンとして選ばれたものだからである。じっくりと耳を傾けて欲しいところである。

 

 なお、本「レコード・アカデミー賞」の選定は、10月22日に各部門賞が選定され、その後一ヶ月間、各部門の審査委員が、担当部門に関係なくすべての部門賞該当作に耳を傾け、11月19日の「大賞三賞」の選定会に臨むという段取りで進められているものである。

 

 あらためて申し上げるが、「レコード・アカデミー賞」は、年間のベスト・ワンを決めるものである。その意味では、すでに2018年度の審査も始まっていると言えよう。最後に、今後とも関係各位の皆様方のご指導、ご鞭撻のほど、お願いいたしますと申し上げておきたい。

 

 


 

2017年度 第55回「レコード・アカデミー賞」受賞ディスク一覧

 

■大賞 交響曲部門

チャイコフスキー:交響曲第6番《悲愴》
テオドール・クルレンツィス指揮ムジカエテルナ
[ソニークラシカル D SICC30426]⑫

 

 

■大賞銀賞 オペラ部門

モーツァルト:歌劇《ドン・ジョヴァンニ》(全曲)
テオドール・クルレンツィス指揮ムジカエテルナ,ディミトリス・ティリアコス(Br)他
[ソニークラシカル D SICC30287~9]①

 

 

■大賞銅賞 現代曲部門

ルノー・カピュソン/21世紀のヴァイオリン協奏曲集〔W.リーム:画家の詩,デュサパン:アウフガング(上昇),B.マントヴァーニ:水の戯れ〕
ルノー・カピュソン(vn)フィリップ・ジョルダン指揮ウィーンso,パリ国立歌劇場o,他
[エラート D WPCS13564]①

 

 

■管弦楽曲部門

シャイー/スカラ座の序曲・前奏曲・間奏曲集
リッカルド・シャイー指揮スカラ座po
[デッカ D UCCD1453]⑪

 

 

■協奏曲部門

ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番,同第2番
フランク・ペーター・ツィンマーマン(vn)アラン・ギルバート指揮 北ドイツ放送エルプpo
[BIS D KKC5713]⑦

 

 

■室内楽曲部門

フランク:ヴァイオリン・ソナタ,ショーソン:コンセール
イザベル・ファウスト(vn)アレクサンドル・メルニコフ(p)他
[ハルモニア・ムンディ・フランス D KKC5787]⑩

 

 

■器楽曲部門

シューベルト:ピアノ・ソナタ第20番,同第21番
クリスティアン・ツィメルマン(p)
[グラモフォン D UCCG1775]⑪

 

 

■声楽曲部門

フレミング/ディスタント・ライト〔バーバー:ノックスヴィル1915年の夏,ヒルボリ:ストランド歌曲集,ビョーク:ウィルス,ヨーガ,オール・イズ・フル・オヴ・ラヴ〕
ルネ・フレミング(S)サカリ・オラモ指揮ロイヤル・ストックホルムpo
[デッカ D UCCD1445]⑤

 

 

■音楽史部門

モンテヴェルディ:聖母マリアの夕べの祈り
ジュゼッペ・マレット指揮ラ・コンパーニャ・マドリガーレ,カンティカ・シンフォニア,ラ・ピファレスカ,他
[グロッサ D OGCD922807(2枚組)]⑩

 

 

■特別部門 吹奏楽/管・打楽器

ベスト・オヴ・マーチ-3
武田晃1等陸佐指揮 陸上自衛隊中央音楽隊
[フォンテック D FOCD9742]⑤

 

 

■特別部門 ビデオ・ディスク「コンサート&ドキュメンタリー」

ベートーヴェン:ピアノ,ヴァイオリンとチェロのための三重協奏曲/交響曲第5番《運命》
ヘルベルト・ブロムシュテット指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウスo,マルティン・ヘルムヘン(p)イザベル・ファウスト(vn)ジャン=ギアン・ケラス(vc)
[アクツェントゥス・ミュージック D KKC9230(BD),KKC9231(DVD-V)]⑪

 

 

■特別部門 ビデオ・ディスク「舞台&劇作品」

ヴェルディ:歌劇《仮面舞踏会》全3幕
ヨハネス・エラート(演出)ズービン・メータ指揮バイエルン国立o,バイエルン国立歌劇場cho,ピョートル・ベチャワ(T)ジョルジュ・ペテアン(Br)アニヤ・ハルテロス(S)他
[C MAJOR D KKC9210(BD),KKC9211(DVD-V)]⑦

 

 

■特別部門 録音

マーラー:交響曲第3番
イヴァーン・フィッシャー指揮ブダペスト音楽祭o,バイエルン放送cho,カンテムス少年少女cho,ゲルヒルト・ロンベルガー(A)他
[チャンネル・クラシックス D OCCSSA38817]CD&SACD ⑦

 

 

■特別部門 企画・制作

モーツァルト/交響曲全集
飯森範親指揮 山形so
[エクストン D OVCL00630(13枚組)]CD&SACD ⑥

 

 

■特別部門 特別賞

ショスタコーヴィチ/交響曲全集
井上道義指揮サンクト・ペテルブルクso,千葉県少年少女o,東京po,新日本po,名古屋po,広島so,他
[SPEX D OVCX00100(12枚組)]④

 

 

■特別部門 歴史的録音

(新設:録音の新旧を問わず、歴史的に意義のある録音等を表彰するものです)

  

シューマン/交響曲全集
[デンオン D COCQ85381~2(2枚組)]⑫
ショスタコーヴィチ:交響曲第10番/同第11番《1905年》
[デンオン D COCQ85383~4(2枚組)]⑫
ブルックナー:交響曲第5番〔原典版〕
[デンオン D COCQ85385]⑫
以上、スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ指揮 読売日本so

 

※丸数字は本誌月評掲載月号。

 


 

レコード・アカデミー賞とは

 

わが国の音楽文化の向上に資する目的を持って、音楽之友社が1963年(昭和38年)に創設したもので、1年間に国内のレコード会社から発売されたクラシック・レコードのうち、当社『レコード芸術』誌「新譜月評」(本年度は2016年1月号~12月号)で高い評価を得たものの中から、部門ごとに演奏や録音などの最も優れたディスクを選定し、発売レコード会社を表彰するもの。2013年には創設50周年を迎えている。回を重ねるごとに多大の成果をあげ、海外を含め各方面から注目されている。

 

2017年度 第55回レコード・アカデミー賞選定委員一覧

 

●交響曲部門=金子建志/諸石幸生/満津岡信育
●管弦楽曲部門=藤田由之/増田良介/浅里公三
●協奏曲部門=岡部真一郎/相場ひろ/大木正純
●室内楽曲部門=大木正純/中村孝義/那須田務
●器楽曲部門=濱田滋郎/那須田務/岡部真一郎
●オペラ部門=髙崎保男/國土潤一/堀内 修
●声楽曲部門=堀内 修/城所孝吉/國土潤一
●音楽史部門=皆川達夫/美山良夫/濱田滋郎
●現代曲部門=長木誠司/白石美雪/石田一志
●[特別部門]吹奏楽/管・打楽器=佐伯茂樹/後藤 洋
●[特別部門]ビデオ・ディスク「コンサート&ドキュメンタリー」=浅里公三/諸石幸生
●[特別部門]ビデオ・ディスク「舞台&劇作品」=浅里公三/諸石幸生
●[特別部門]録音=神崎一雄/石田善之
●[特別部門]企画・制作=浅里公三/満津岡信育/増田良介
●[特別部門]特別賞=浅里公三/満津岡信育/増田良介
●[特別部門]歴史的録音=浅里公三/満津岡信育/増田良介

 

◎選定委員長=諸石幸生

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